熱中症が安全配慮義務違反になるケース
プロが解説
これまで累計400社以上の過酷な暑熱環境に向き合い、
改善をサポートしてきた「株式会社五常」代表の河野が、現場目線で分かりやすく解説します。
法改正や各種ガイドラインの整備により、職場における熱中症対策は、これまで以上に事業者の責任が明確になっています。本記事では、倉庫・工場の担当者が押さえておくべき安全配慮義務としての熱中症対策について、法的な考え方と実務上求められる対応を解説します。
「一応対策している」という状態にとどまらず、安全配慮義務違反のリスクを避けるために、現場でどこまで対応すべきかを判断する実務基準としてご活用ください。
安全配慮義務とは
労働契約法第5条※に基づき、事業者が従業員の生命や健康を守るために講じるべき法的義務を指します。精神論や注意喚起だけでは義務を果たしたことにはならず、具体的かつ実効性のある措置を講じ、従業員が安全に働ける環境を整備することが求められます。
特に倉庫や工場などの高温多湿な現場では、事業者が予見可能な危険(熱中症リスク)を把握しながら適切な対応を取らず、その結果として健康被害や事故が発生した場合、安全配慮義務違反が問われる可能性があります。
安全配慮義務違反になるケース
裁判や労働基準監督署による調査で、事業者の過失(安全配慮義務違反)が問題視されやすいのは、主に「本来講じるべき対策を講じていない」ケースです。
- 環境管理の不備:WBGT(暑さ指数)を計測せず、危険な暑熱環境にもかかわらず空調や換気設備を適切に稼働させていない
- 作業管理の不備:水分補給や休憩の時間を確保せず、長時間の連続作業を行わせている
- 救護対応の不備:体調不良を訴えた従業員に対し、休憩や作業離脱を指示せず、就労を継続させた
これらの状況が原因で熱中症が発生した場合、労働基準監督署への是正指導や、損害賠償請求に発展するリスクが高まります。「知らなかった」「気づかなかった」では免責されない点が、安全配慮義務の厳しさです。
違反にならないためには?
厚生労働省が通達した
5つの熱中症対策
厚生労働省が通達しているガイドラインは、単なる推奨事項ではありません。万が一事故が発生した際に、事業者が適切な措置を講じていたかどうかを判断する基準として位置付けられています。
以下の5項目は、工場・倉庫において実施していることが前提となる(Must)水準として捉える必要があります。
作業環境管理
「暑いと感じる」といった感覚的な管理では不十分です。客観的な指標であるWBGT(暑さ指数)の測定と記録を行うことが基本となります。WBGT値は定期的に測定し、記録として残しましょう。
基準値を超えた場合には、WBGT値を下げるための物理的対策を速やかに実施できる体制が必要です。大型ファンの稼働、遮熱シートの設置、スポットクーラーの追加などを、設備と運用の両面から計画してください。
作業管理
高温環境下での長時間にわたる連続作業は、管理上の不備と判断されるおそれがあります。WBGT値に応じて、作業時間と休憩時間の配分を調整し、症状が出る前に休憩を取る「予防的な休憩」をルールとして明確化しましょう。
特に気温が上がりやすい14時前後の重作業を避ける工程管理や、空調機能付き作業服などの身体冷却用具を活用し、作業者の身体的負荷を下げる仕組みを取り入れることが重要です。
健康管理
同じ作業環境であっても、年齢や既往歴などにより熱中症リスクは異なります。そのため、画一的な管理だけでは不十分です。
就業前の健康状態(睡眠不足、飲酒の有無、朝食摂取状況など)の確認や、健康診断の結果に基づく高リスク者への作業配慮をルール化しましょう。
また、暑さに体が慣れていない新入社員や、連休明けの従業員については、作業負荷を抑えて様子を見るなど、特別な配慮を行うことが実務上の基本です。
労働衛生教育
従業員自身が危険性を理解していなければ、どれだけ対策を整えても実効性は高まりません。教育の未実施は、事業者の責任が問われる要因となります。
雇い入れ時や作業内容変更時には、熱中症の症状や予防方法、緊急時の連絡体制について教育を行い、確実に理解させる必要があります。
あわせて、体調不良を申告しやすい職場環境をつくることも重要です。顔色や反応の変化に気付いたら声を掛け合うなど、相互確認の仕組みを現場に定着させましょう。
応急処置
熱中症発症後の対応が遅れると、重篤化や後遺症につながるおそれがあります。初動対応の判断ミスは、重大な責任問題に発展しかねません。
緊急連絡網の整備、近隣医療機関の把握、現場への冷却用品(氷、水、経口補水液など)の常備を行い、すぐに対応できる体制を整えておきましょう。
さらに、実際の発症時に備え、実地訓練を定期的に実施することが重要です。救急要請や役割分担を事前に決めて訓練しておくことで、初動の数分間に適切な応急処置を行えるようになります。
現場の悩み、自分事として解決します
五常は単なる業者ではなく、お客様の現場課題を背負うパートナーです。
「何でも相談できる」安心感と、「必ず解決する」という執念。
この両輪で、暑熱環境・熱中症対策の課題をスッキリ解消へと導きます。


解説者:
河野
対外的に説明できる、物理的な暑熱対策が
ポイント
熱中症における安全配慮義務違反は、熱中症の発生そのものより「予見できた危険を放置したか」によって判断されます。 そのため、倉庫や工場では作業環境管理として、風や熱の制御を含めた暑熱対策が不可欠です。
五常は法令の考え方を踏まえ、対外的にも明確に説明でき、現場で無理なく継続できる実効性ある対策をご提案しています。